斜面を覆う白い石灰華の段に、温泉が淡い水色を満たしてゆく。
丘の上には古代都市ヒエラポリスの石柱が、白い棚田を静かに見下ろしている。
2000年の沐浴と祈りが、白い大地とひとつに堆積した複合遺産である。
タップで切り替え
湯が築いた白い丘
南西アナトリアの台地の縁から、炭酸カルシウムを溶かし込んだ温泉が絶え間なく湧き出している。湯は斜面を伝って空気に触れる瞬間に方解石を析出させ、長い時間をかけて段状の水盤を幾重にも沈着してきた。
紀元前2世紀、ペルガモン王国はこの泉に都市を構えた。湧き出る温水と神々の気配が、療養と祭儀を求める者を地中海各地から呼び寄せ、白い崖の頂に列柱と神殿、円形の劇場と巨大な共同墓地が築き上げられていった。

温泉が育てた二つの遺産
世界の石灰華地形のなかで、これほどの規模で白い斜面と温泉プールが現役のまま生き続けている例は他に少ない。沈着は今も日々進み、棚の縁はゆっくり前へ伸びていく。1988年、自然と文化を併せ持つ複合遺産として登録された。
ヒエラポリスの遺構は、療養の場としての都市が辿った変遷をそのまま留めている。神殿、ローマ期の浴場、ビザンツ期に建てられた、使徒フィリポを祀る八角の聖堂。聖なる泉では、地震で倒れた古代の柱の上を、今も湯が静かに渡っていく。

裸足で渡る白の段
棚田を歩くには履物を脱ぐ。沈着した石灰華は柔らかな足触りを返し、滲み出した温泉が踝までを包んで温める。眼下に広がる水盤の青は、湯の透過と白い底が混じり合った微妙な色相で、立つ位置を移すたび陰影を変えていく。
夕刻、太陽が斜面に低く差し込めば、白い段の縁が淡い橙に縁取られ、水盤の色は次第に深い青へと沈んでいく。丘上の劇場跡に立てば、棚田と平原の彼方に陽が落ちる軌跡を、扇形の石段ごしに正面から受け止めることになる。
日本からの行き方
日本からは、トルコ航空が東京とイスタンブールを直行便で結んでいる。玄関口となるイスタンブールからは国内線でデニズリへ飛び、車で石灰棚のふもとへ。多くの旅では、カッパドキアやエフェソスを巡る周遊行程の一日としてパムッカレを訪れる。
訪れるなら、五月から六月、あるいは九月から十月の穏やかな季節が向く。遺跡は思いのほか広く、ヒエラポリスの散策まで含めると、ゆとりをもって半日ほどを見込んでおきたい。
入場と予約
ヒエラポリス遺跡と石灰棚は一体で入場が管理され、入場料がかかる。トルコ文化観光省の電子チケットサイトで事前購入でき、混雑期はオンラインでの確保が安心だ。クレオパトラの泉での遊泳は別料金となる。
訪問時の留意点
- 持ち込み石灰棚の上は素足での歩行が義務づけられ、靴やサンダル、靴下は脱いで手やバッグに持ち、棚を傷めないよう保護する。
健康と安全
石灰棚は湯が流れて滑りやすく、素足で歩く足元には注意がいる。夏は日中の日射が強く日陰がほとんどないため、帽子や日焼け対策と水分の備えをしておきたい。医療機関は麓のデニズリ市街に揃う。
モデル日程
トルコ周遊8日の一例。往復の移動に各1日、イスタンブールとカッパドキアを前半に置き、石灰棚に立つ1日を核にエフェソスへ抜ける。
- 移動 1日
- イスタンブール 2日
- カッパドキア 2日
- パムッカレ 1日
- エフェソス 1日
- 帰路 1日
内訳
往路
イスタンブール
カッパドキア
パムッカレ
エフェソス
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。














































