南パタゴニアの果てに、氷河が今も前へ動き続ける一帯がある。
青白い氷壁から塊が剥がれ、湖面に低く落ちて谷へ余韻を残す。
氷原と尖峰、二つの極が一つの国立公園の中に並んで横たわる。
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氷の原野と稜線
アンデスの背骨が南へ細まる果て、極地を除けば世界でも有数の規模を持つ南パタゴニア氷原が高地に広がっている。広大な雪の台地の縁から無数の舌が東へ下り、湖と岩肌のあいだに巨大な氷の壁を残してきた。
太平洋から吹き上がる湿った気流が山脈に阻まれて雪を落とし、上部で積もる新雪が深部の氷へと変わって少しずつ下流へ送り出される。塊は今も自重で動き続け、その先端が湖や谷の縁を毎日のように削っている。

動き続ける氷の前線
世界各地の氷河が後退を続ける時代にあって、ペリト・モレノ氷河は長らく供給と崩落のつり合いを保ち、先端の位置をほぼ動かさずにきた稀な存在である。前縁は幅5キロメートル、湖面上の高さは平均およそ74メートルに達する。
壁の縁から大きな氷塊が音と共に湖面へ落ちる崩落は、近距離で観察できる稀な現象である。一方、公園の北部には鋭角に立つフィッツロイ山域が控え、氷と岩、二極の威容が同じ国立公園の名のもとに並んで横たわる構図を作っている。

氷壁の前に立つ
展望デッキから氷壁を見上げると、青と白の濃淡が水平に幾段も重なり、底のほうへ深い藍色が沈んでいる。乾いた風が湖面を渡り、頬を冷たく撫でる。耳には遠い破裂音が時折届き、視界のどこかで小さな塊が動いている。
やがて壁面の一部が音もなく裂け、遅れて雷に似た低い響きが届く。崩れた氷は湖面へ落ち、白い水柱を上げて再び鎮まる。日が傾くと青はさらに深く沈み、氷壁の表面は灰青に変わる。荒い呼吸の音だけが、空気の中に長く残る。
日本からの行き方
日本からアルゼンチンへの直行便はなく、北米(ダラス等)や中東(ドバイ)、メキシコシティを経由して首都ブエノスアイレスへ向かう。乗り継ぎを含め、片道はおよそ二日がかりの旅路となる。地球の反対側への、長い道のりだ。ブエノスアイレスからは国内線でおよそ3時間半、パタゴニア観光の玄関口エル・カラファテへ入る。
エル・カラファテの町からペリト・モレノ氷河へは、車やバスでおよそ1時間半。国立公園内の遊歩道や遊覧船から、轟音とともに崩れ落ちる蒼い氷河を望む。ベストシーズンは夏の11〜3月だが、最暖月でも冷涼で天候は変わりやすい。
入場と予約
国立公園には入園料があり、ペリト・モレノ氷河側の入口では当日に現金やカードで支払えるほか、公式サイトで事前購入もできる。混雑期は事前のオンライン購入が待ち時間の短縮に有利。氷上トレッキングや遊覧船は別途、催行会社への申込みが要る。
訪問時の留意点
- ガイド氷河上のトレッキングは国立公園の認可を受けた事業者の公認ガイド同行が条件で、単独での氷上立入はできない。
- 年齢氷上トレッキングには年齢条件があり、軽装版でおおむね8〜65歳、本格版は18〜50歳を目安とする。
健康と安全
夏でも氷河周辺は冷涼で強風が吹くため、防寒と雨風対策が要る。遊歩道は階段や段差が多く、氷上歩行はアイゼンを着けての不安定な足場となる。最寄りの医療拠点はエル・カラファテの町の病院で、氷河までは車で1時間半ほどの距離となる。
現地の設備
観光の拠点はエル・カラファテの町で、ホテルや飲食店、商店、銀行やATMが揃い、氷河ツアーの催行会社も集まる。氷河側の国立公園内には遊歩道と遊覧船の発着所があり、町から日帰りで氷河を訪ねる行程が一般的となる。
モデル日程
パタゴニア周遊12日の一例。往路に2日、帰路に3日を要し、ペリト・モレノ氷河を核に、エル・チャルテンとチリ側のパイネを前後に挟む。
- 移動 2日
- エル・カラファテへ移動 1日
- ペリト・モレノ氷河 2日
- エル・チャルテン 2日
- パイネ国立公園 2日
- 帰路 3日
内訳
往路
エル・カラファテへ移動
ペリト・モレノ氷河
エル・チャルテン
パイネ国立公園
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。














































