モロッコの南東、大砂海の縁に赤い砂丘がそびえる無音の地。
風が稜線の砂を細く流し、朝夕の光が起伏を橙と影に塗り分けていく。
隊商の踏み跡も星のめぐりも呑み込んで、砂だけが静かに横たわる。
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風が積んだ砂の海
モロッコ南東部、平坦な礫の大地が果てるあたりに、エルグ・シェビと呼ばれる砂丘群が突然せり上がる。高いものは麓から150メートルに届く。周囲の風が遠い地層から細かな砂を運び、一点に積み上げ続けた末の隆起である。
砂粒には酸化鉄が混じり、丘全体が赤みを帯びた橙に染まる。卓越風は稜線を絶えず削っては盛り直し、輪郭は日ごとにわずかずつ移ろう。固い岩盤の地表に砂だけが孤立して堆積した、サハラの西の縁を示す地形である。

隊商が渡る縁
この砂丘の麓は、古くからベルベルの遊牧民が群れを連れて行き交う土地であった。砂の海に道はなく、人は風紋と星の位置だけを頼りに方角を読む。砂上を歩むらくだの隊列と、夜を越す天幕の暮らしが、いまも砂の懐に息づいている。
礫砂漠のただ中に一塊の大砂丘がそびえる景は、広いサハラでも数えるほどしかない。遮るもののない開けた地形が、風と熱と光の交わりを一望に収めさせる。砂が音を吸い、人の声は遠くまで届かず、ほどけて消えていく静けさがここに満ちる。

砂と夜に身を置く
丘を登るたび、足は乾いた砂に沈み、踏み出すほどに崩れて歩みが遅れる。頂に立てば赤い起伏が地平まで波打ち、視界を遮るものは何もない。日中の砂は陽に灼かれて熱を持ち、夕が近づくにつれ橙が深まり、影が谷へ長く伸びていく。
日が落ちれば気温は一気に下がり、乾いた大気のもとに無数の星が降りてくる。物音は砂に吸われて絶え、自分の呼吸だけが耳に残る。やがて東の空が白み、朝日が稜線をひと筋ずつ起こすころ、砂面は薔薇色から金へと色を移し、一日が静かに明ける。
日本からの行き方
メルズーガはモロッコ南東部、アルジェリア国境に近い砂漠の村だ。日本からの直行便はなく、ヨーロッパや湾岸都市で乗り継いでカサブランカへ入る。さらにマラケシュやフェズへ移って砂漠を目指す。乗り継ぎを含め、片道はおよそ二日がかりの旅路になる。経由するマラケシュではジャマ・エル・フナ広場、フェズでは旧市街の散策を組み込む行程が多い。
起点都市からメルズーガへは、アトラス山脈を越える陸路で向かう。距離があるため途中で一泊を挟む行程が多い。砂丘の入口からは四輪駆動車やらくだに乗り換える。気候の面では晩秋から早春が過ごしやすく、この時期に訪れる行程が中心となる。
健康と安全
夏は日中の気温が40度を超え、強い日射と乾燥が体力を奪う。冬の夜間は氷点近くまで冷え込み、春先は砂嵐が吹くこともある。日除けと水分、防寒を備えて行動したい。医療は村の薬局で簡易な対応にとどまり、本格的な施設は約40〜50キロ先のエルフードやリッサニにある。
現地の設備
メルズーガは小さな砂漠の村で、商店や食堂、簡易な薬局がそろう。砂丘での滞在は食事や寝具を備えたキャンプで完結し、案内人が世話をする。両替やまとまった買い物は約40〜50キロ離れたエルフードやリッサニの町で済ませておくと安心だ。
モデル日程
モロッコ周遊8日の一例。往復の移動に各日を充て、フェズと砂漠を結ぶ長い陸路を軸に、メルズーガの砂丘で一泊し、帰路にアトラスの村々とマラケシュを挟む。
- 移動 2日
- フェズ 1日
- サハラ砂漠 2日
- アトラスの村 1日
- マラケシュ 1日
- 帰路 1日
内訳
往路
フェズ
サハラ砂漠
アトラスの村
マラケシュ
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。














































