蜂蜜色の石灰岩を高く積み上げ、稜堡と城壁がぐるりと囲う城塞の街。
潮風が格子の街路を吹き抜け、金色の石肌が地中海の光を照り返す。
守りと信仰を担い、大いなる港に臨み、記憶を刻みつづける石の首府。
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岬に築かれた要塞
オスマン帝国による1565年の大包囲を耐え抜いた聖ヨハネ騎士団は、その翌年、二つの入り江に挟まれた岬の尾根に新たな拠点の礎を据えた。守りを固めるために構想された、要塞と一体の計画都市であった。
首府の名は、包囲を率いた騎士団長ジャン・ド・ラ・ヴァレットに由来する。設計は当代の軍事技師に委ねられ、城壁の内側には碁盤の目の街路が引かれた。切り出したばかりの蜂蜜色の石灰岩が、稜堡から館までを一様な色に染めている。

石に凝らされた意匠
一人の構想のもとに全体が引かれた都市は、ヨーロッパでも数えるほどしか残らない。55ヘクタールの市街に300を超える歴史的建造物がひしめき、大通りは市門から湾へ臨む砦まで一直線に貫く。その全体が後期ルネサンスの結晶として立つ。
外観の質実な構えとは裏腹に、その内部は黄金と大理石に覆われたバロックの奥行きをたたえる。准司教座聖堂には、カラヴァッジョが遺した『洗礼者聖ヨハネの斬首』が今も掛かる。厳めしい外皮の内に、南欧の絢爛が息づいている。

坂道と停泊地
碁盤の目に区切られた通りは坂となって水辺へ下り、突き当たりに入り江と対岸の砦をのぞかせる。両側の建物からは、木で囲われた出窓が朱や緑に塗られて張り出し、石畳の上に短い影を落とす。歩くほどに、視界は市中と海のあいだを行き来する。
日ざしの高い午後には石が白く乾き、傾く光の中で石肌は淡い飴色から黄金へと深まっていく。高台の庭園に立てば、港の停泊地が眼下に開け、正午と夕刻には礼砲の音が水面を渡る。夜がおりると、街灯が石の輪郭をひとつずつ淡くふちどっていく。
日本からの行き方
日本からマルタへの直行便はない。ローマやイスタンブール、ドバイなどの主要都市で乗り継ぐのが一般的で、乗り継ぎを含めると片道はおよそ二日がかりの旅路になる。マルタ島を周遊する拠点として、首都ヴァレッタに滞在する旅行者が多い。
島の玄関口は市街の南約8キロメートルにあるマルタ国際空港で、ヴァレッタまでは車でおよそ20分と近い。マルタはシェンゲン協定圏に属する。街歩きには気候の穏やかな初夏や秋が向き、盛夏は地中海クルーズの寄港が重なって旧市街が混み合う。
入場と予約
市街は自由に歩けるが、街の白眉である聖ヨハネ准司教座聖堂は有料で、入口で拝観券を示して入る。当日券も買えるものの、日中は窓口に列ができやすく、公式サイトでの事前購入が待ち時間を抑えるうえで有利になる。開場は月曜から土曜で、日曜と祝日は閉まる。
訪問時の留意点
- 服装宗教施設のため肩と膝の隠れる服装が求められ、大理石の床を傷めるピンヒールでは入場できない。
健康と安全
半島の尾根に築かれた市街は坂と階段が多く、大通りから海側へ下る路地には長い石段が続く。石灰岩は夏の日ざしを白く照り返し、日中は実際の気温以上に暑く感じやすい。帽子と水を備え、歩きやすい靴で朝夕に歩くと無理がない。医療機関は市内と近郊に揃う。
モデル日程
マルタ8日の一例。首都ヴァレッタに連泊し、城塞と旧市街を核に、イムディーナやゴゾ島へ足を延ばす。
- 移動 2日
- ヴァレッタ 2日
- 島内周遊 2日
- 帰路 2日
内訳
往路
ヴァレッタ
島内周遊
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。
