赤い砂の大地に、巨大な岩の塔がいくつも孤立して屹立している。
朝夕の斜めの光が岩肌を朱に灼き、乾いた風だけが広い野を渡る。
ナバホが聖地と敬い、西部そのものの象徴となった岩の国である。
タップで切り替え
削り残された岩柱
コロラド高原の一角では、風と水が長い歳月をかけて厚い砂岩の層を削り続けてきた。硬い部分は残って立ち上がり、脆い部分は崩れて平らに沈む。かつて一続きだった台地の名残が、乾いた大地のあちこちに塔となって取り残されている。
胴を成すのは赤い砂岩で、その上を硬い岩が笠のように覆い、裾には崩れやすい泥岩が横たわる。鉄を含んだ層は日の傾きに応じて朱から臙脂へと色を移し、澄んだ大気が遠くの岩肌までくっきりと浮かび上がらせる。

荒野が纏う物語
この谷はナバホの言葉でツェ・ビイ・ンディズガイ、岩の谷と呼ばれる。国立公園ではなく彼らが自ら統べる部族公園で、今も家族が羊を追って岩の狭間に暮らす。聖地とされる奥には立ち入りを控える一帯があり、公認の案内なしには踏み込めない。
1938年の暮れ、地元の交易商に招かれた映画監督ジョン・フォードが、この地にカメラを据えた。翌年公開された作品は評判を呼び、岩の峰の連なる地平は西部の象徴として世界へ広まった。以後も銀幕に現れ、人々がこの輪郭にアメリカの荒野を重ねてきた。

地平を渡る一日
未舗装の道が砂塵の原へ分け入ると、車体は砂利に揺られ、両側の巨大な岩の塊が後ろへ流れていく。巨岩の落とす沈黙は深く、低木をかすめるそよぎのほかに響きはない。近づくほどに岩壁は空を覆い、人の背丈がその足元で頼りなく縮んでいく。
朝の光は東の面から射し込み、岩の肌を橙に灼いて長い影を西へ伸ばす。日中は色が退いて岩は褐色に沈み、夕刻には空の際が燃えるように染まっていく。人工の灯が乏しいこの地では、日が落ちると黒い影が満天の星を背にそびえ立つ。
日本からの行き方
モニュメント・バレーはアリゾナ州とユタ州の境、ナバホの地にある。日本からの直行便はなく、フェニックスやロサンゼルスで国内線と車に乗り継ぐ。片道はおよそ二日がかりの旅路で、ラスベガスやフェニックスを起点に西部の見どころと巡る。
現地の拠点はページやフラッグスタッフで、車で半日ほど見ておきたい。園内には17マイルの未舗装路がめぐり、路面は荒く砂も深いため車高のある車が向く。7月から9月は雷雨で道がぬかるむことがあり、冬は路面が凍てつく朝もある。
入場と予約
園はナバホ・ネイションが管理する部族公園で、入園は当日ゲートで料金を払う方式である。時間枠制の事前予約はなく、開園時間内に着けばそのまま入れる。国立公園の年間パスは使えず、入園料は別に必要になる。開園は夏と冬で終了時刻が異なり、最終入場は締切が早い。
訪問時の留意点
- 持ち込みドローンの飛行はナバホの地全域で禁じられ、撮影目的でも認められない。
- ガイド谷をめぐる未舗装路の外側、奥地の岩や史跡へ立ち入るにはナバホ公認ガイドの同行が要る。
健康と安全
夏は日射が強く、日中の気温が35度を超える日も多い。谷に日陰は乏しく、水と日除けを欠かせない。園内の道は未舗装で砂や岩が続き、足場の悪い場所もある。医療機関は南のケイエンタの町にあり、園内からは車で30分ほど離れている。
現地の設備
谷を望む高台にはホテルとレストランがあり、園の入口には案内所と手洗いが整う。すぐ北のグールディングスには宿と食堂、商店、給油所がまとまり、交易所として始まった歴史を伝える。より広い買い物や食事は南のケイエンタの町で足せる。
モデル日程
米西部周遊7日の一例。ラスベガスを起点にグランドサークルの奇岩を巡り、谷を望む宿に泊まって夕景と朝の光を待つ核心を1日置く。
- 往路 1日
- 周遊 3日
- モニュメント・バレー 1日
- 帰路周遊 1日
- 帰路 1日
内訳
往路
周遊
モニュメント・バレー
帰路周遊
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。
