雪をぶあつくまとった樹が、ゆるやかな丘の起伏に点々と散らばる。
正午の空は深い青に沈み、夜には緑の光が音もなく渡っていく。
トナカイの橇が幾代も通ってきた道の先に、北の果てが横たわる。
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雪が樹をかたどる
フィンランドの最北に横たわるラッピ県は、国土のおよそ3割を占めながら、そこに暮らす人は18万に満たない。針葉樹の森と凍った湖、低くうねる丘とがゆるやかに入れ替わりながら、行けども尽きることなく続いていく。
冬の湿った大気は、枝に触れるそばから凍りつく。それが繰り返されるうちに樹は白い塊へ姿を変え、もとの輪郭を失う。フィンランド語でテュッキュと呼ぶ。内陸のキッティラでは氷点下51.5度が観測され、国の最低記録として残る。

闇が色を持つ季節
北の端のウツヨキでは、晩秋から50日あまりのあいだ太陽が地平の上に現れない。カーモスと呼ばれるこの季節も、空が黒く塗り潰されるわけではない。正午の前後には、地平の下に留まる陽が大気の上層を照らし、雪原ごと深い青に染めていく。
闇が長いぶん、空には緑の光が訪れる。晴れた夜のおよそ2回に1回は現れるという。そしてその下で、サーミはトナカイとともに歳月を重ねてきた。放牧地は国の広さの3分の1を超えて延び、いまも組合ごとに分かれて受け継がれている。

雪を踏む音だけが残る
冬の昼は数時間で暮れる。その短い明るさのあいだ、あたりはどこまでも青みを帯び、雪に覆われた樹が影も落とさずに並ぶ。犬橇が走り出せば、耳に届くのは滑走部が路面を削る音と、犬の息づかいだけになる。橇が止まれば、それも消える。
日が落ちれば、あとは空を見上げて待つ時間になる。トナカイの橇で森を抜けるか、ガラス屋根の宿に横たわるかして、雲の切れ間を探しつづける。その光は前触れなく現れ、淡く滲んでは、また闇へ引いていく。何も現れない夜も、同じだけある。
日本からの行き方
日本からヘルシンキへは直行便があり、片道はおよそ1日がかりの旅路となる。ヘルシンキからは国内線でラッピ県へ入る。空の玄関はロヴァニエミ、キッティラ、イヴァロが主で、いずれも2時間に満たない飛行になる。
夜行列車で入る方法もあり、ヘルシンキから12時間ほどでロヴァニエミに着く。空港や駅から宿へは送迎が通じている。冬の道は雪と氷に覆われて所要が延びやすく、視界の悪い日や強い冷え込みの日には便が遅れることもある。
訪問時の留意点
- 年齢スノーモービルの運転は15歳以上に限られ、公式ルートの走行や道路の横断には運転免許が要る。
健康と安全
北極圏の冬は冷え込みが厳しく、内陸では氷点下20度を下回る日が珍しくない。肌の露出を抑えた重ね着に、手足の先まで覆う装備を足したい。橇やオーロラ観測のツアーでは、防寒着一式を貸し出す事業者が多い。医療の拠点はロヴァニエミのラップランド中央病院で、24時間の救急を備える。
現地の設備
宿・商店・飲食店が揃うのはロヴァニエミで、県の中心として大型の店も並ぶ。レヴィやサーリセルカ、イヴァロといった拠点にも宿と食事処、売店がまとまり、橇やオーロラ観測の受付も置かれている。拠点どうしは離れており、ロヴァニエミからイナリまでは車で4時間ほどかかる。
モデル日程
オーロラを主題にした7日の一例。往路に1日を費やし、ラップランドに3日続けて滞在したのち、ヘルシンキを挟んで戻る。
- 移動 1日
- ラップランド 3日
- ヘルシンキ 1日
- 移動 2日
内訳
往路
ラップランド
ヘルシンキ
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。
