アイガーの黒い岩壁の背後に、雪をいただく峰が肩を並べて連なる。
谷底には滝がいくつも落ち、鉄道が岩の内をのぼって氷河へ届く。
牧草地から氷雪の高みまで、アルプスがそのまま層をなす。
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氷河が刻んだ三峰の谷
ベルナーオーバーラントの南に、アイガー・メンヒ・ユングフラウの岩壁が横に並んで立ち、その裏側には氷の原が深く広がっている。太古の氷が谷を削り取り、麓にはなだらかな牧草地と、切り立ったU字の谷が残された。
谷底のラウターブルンネンでは、両側の絶壁からいくつもの滝が落ち、なかでもシュタウプバッハの水は297メートルをひといきに下って霧となる。氷雪の頂と、牛の鈴が渡る緑の斜面とが、垂直に積み重なってひとつの眺めをつくる。

氷の高みへ通う鉄路
1912年、グリンデルワルトやラウターブルンネンから連なる線路の先に、岩山の内部を貫く登山鉄道が開通した。アイガーとメンヒの山体を長いトンネルで抜け、ユングフラウヨッホへ達する。標高3454メートル、ヨーロッパで最も高い駅である。
駅の南側には、アルプスで最も長いアレッチ氷河が流れ下っている。これらの氷と周囲の峰々は、スイス・アルプス ユングフラウ-アレッチとして世界自然遺産に登録された。北を振り返れば、登攀史を刻んだアイガーの北壁が、影をたたえて切り立つ。

鈴の音から氷の際へ
鉄道が岩の中へ入ると窓の外は闇に変わり、やがて扉が開くと空気は薄く、頬を刺す冷気が流れ込む。展望台に立てば、眼下には白い氷の原がどこまでも続き、遠い稜線と雲だけが視界を仕切っている。真夏でも一帯は雪に閉ざされている。
谷へ下れば、風景はふたたび緑に戻る。斜面には放牧の牛が散り、鈴の音が草地を低く渡り、木造の家々が日を受けて並ぶ。朝夕には、山々の頂が順に赤く染まってから藍へ沈み、麓が先に暗くなる。冬に雪が積もれば、頂の輪郭だけが闇の上に白く残る。
日本からの行き方
日本からは玄関口となるチューリッヒへ直行便もあり、ヨーロッパの主要都市で乗り継いで入る旅程も多い。いずれも片道はおよそ一日がかりの旅路を見ておきたい。空港からは鉄道で山あいへ向かう。
チューリッヒやベルンからは、インターラーケンを経てグリンデルワルトやラウターブルンネンへ鉄道が通じ、乗り換えて谷の村へ入る。歩く季節は初夏から秋にかけてで、山の天気は変わりやすく、冬は積雪で一部の登山鉄道やロープウェイが運休することもある。
入場と予約
ユングフラウ地方の村や谷は自由に歩けるが、中心となるユングフラウヨッホへの登山鉄道は乗車券が要る。繁忙期の5月から10月は時間枠を指定する座席予約が必須で、それ以外の時期も好天の日は予約が勧められる。切符と座席は公式サイトから事前に確保できる。
健康と安全
標高3454メートルのユングフラウヨッホでは空気が薄く、人によっては頭痛や息切れを覚えることがある。上部は真夏でも氷点下になりうるため、防寒具を用意し、体調に無理のない範囲で滞在時間を区切りたい。医療の拠点は麓のインターラーケンにあり、24時間の救急を備えた病院が置かれている。
現地の設備
グリンデルワルト、ラウターブルンネン、インターラーケンといった麓の町や村には、宿・商店・飲食店が揃い、買い出しの拠点になる。ユングフラウヨッホの駅舎にも、レストランや売店、屋内の展望施設が備わり、標高の高い場所でも暖と食事をとれる。谷の各所へは登山鉄道やロープウェイが通じている。
モデル日程
スイスとユングフラウ地方9日の一例。往復の移動に各2日、グリンデルワルトの連泊を核に展望地と谷を巡り、後半にルツェルン方面の周遊を挟む。
- 移動 2日
- ユングフラウ地方 3日
- ルツェルン周遊 2日
- 帰路 2日
内訳
往路
ユングフラウ地方
ルツェルン周遊
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。
