花崗岩の峰々が、眼下に広がる白い雲海の上へ島のように連なっている。
岩の裂け目に根を張った松が枝を伸ばし、霧が峰のあいだを絶えず渡っていく。
詩と画に写されてきた、中国の名山の原型がこの高みにある。
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岩峰と奇松の成り立ち
中国東部、安徽省の南に、花崗岩の岩体が数億年の隆起と浸食を経て林立する山群がある。垂直の節理に沿って風雨が岩を割り、塔のように立つ無数の峰と、奇岩と呼ばれる怪異な岩塊を削り出しては、風化した尾根の上に残していった。
岩肌のわずかな裂け目には、黄山松と呼ばれる松が根を差し込み、痩せた岩の上で枝を横へ平らに広げて育つ。夏は谷から湧いた霧が峰を包み、冬は雪が岩を白く覆って、季節ごとに山肌の陰影を静かに描き替えていく。

画題となった四絶
奇松・怪石・雲海・温泉は黄山の四絶と称され、これほど密に岩と松と雲が幾重にも重なり合う山は、中国の名山のなかでも他に並ぶものが少ない。切り立つ峰は見る方角を変えるごとに姿を移し、同じ眺めをふたたび結ばない。
山水画の画家たちはくり返しその山容を写しとり、切り立つ岩と横へ張り出す松の姿は、後の中国の山水表現に手本を与えた。1990年には世界の文化と自然をあわせもつ遺産として登録され、今も人の手を離れた景が保たれている。

稜線で雲海を待つ
ロープウェイでひと息に高みへ上がると、岩を刻んだ細い石段が峰から峰へと続く。崖に沿う階段を登るうちに視界が開け、足元の谷から白い雲が湧き上がって、向かいの岩峰を腰から下に沈めていく。松の間を抜ける風の音だけが耳に残る。
夜明け前の稜線では、雲海の彼方が茜に染まり、頂だけが暗い海の島のように浮かび上がる。日が昇るにつれ岩肌は金色を帯び、谷を満たしていた雲は光を受けて薄れていく。天候の変わりやすい山ゆえ、この景に出会えるかは時の運となる。
日本からの行き方
日本から黄山への直行便はなく、上海や杭州を経由して向かう。上海や杭州の空港から市内の高速鉄道駅へ移り、黄山北駅までは上海虹橋からおよそ3時間、杭州東からは1時間半ほどで着く。黄山北駅からは路線バスで風景区の麓へ向かう。
麓の登山口からは、雲谷・玉屏・太平の3本のロープウェイが稜線へ通じ、乗車10分ほどで山上に出る。日本からの道のりは片道でおよそ2日がかりのため、初日は移動に充てる行程が多い。新緑の初夏から晴天の続く秋にかけて山景に恵まれやすい。
入場と予約
黄山風景区は入山券が必要で、実名による事前予約制がとられている。1日の入場枠に上限があり、繁忙期は数日前に埋まることが多い。予約は7日前から受け付け、当日の窓口購入は確実でない。天都峰など特定の峰は、別枠の予約を求められる時期がある。
訪問時の留意点
- 持ち込み低空を飛ぶ無人機は、業務目的の許可機を除いて飛ばせない。持参する場合は麓の預かり所に預ける。
健康と安全
登山は岩を刻んだ石段が主で、崖沿いの急な上り下りが長く続く。歩きやすい靴と、体力に合わせた休憩を用意したい。標高1800m級の山上は真夏でも冷え込み、天候は急に変わる。防寒具と雨具を携えるとよい。急な傷病は山上の宿や管理所が窓口となり、麓の黄山市街に病院がある。
現地の設備
山上には複数のホテルと食事処、売店があり、日の出や雲海を待って泊まる旅程が組める。荷は歩荷が担ぎ上げる仕組みもある。水や食料は麓から運ばれるため山上では割高になり、行動用の飲み物や軽食は麓で整えておくとよい。トイレは主要な景点に設けられている。
モデル日程
黄山6日の一例。上海か杭州を玄関口に、高速鉄道で山へ入り、山上に立つ2日を核として往復の移動を両端に置く。
- 移動 2日
- 黄山 2日
- 徽州の古村 1日
- 帰路 1日
内訳
往路
黄山
徽州の古村
帰路
主要旅行会社の同方面ツアーに見られる標準的な組み立ての一例。日数・順序は商品により異なる。
