谷の斜面を色とりどりの家々が埋め、路地は迷路のように丘を這う。
石畳を上る坂の途中、どこかの鐘の音が家並みを渡っていく。
地の底を穿った銀の富が、この色彩と路地の喧噪を育てた。
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谷にひらいた色彩の街
グアナファトは、標高2000メートルを超える高地の細い谷にひらいた街である。16世紀に銀脈が見つかると採掘の民が谷へ流れ込み、平地の乏しい斜面へ家がせり上がっていった。地形が街のかたちをそのまま決めた。
18世紀、バレンシアナ鉱山をはじめとする坑道は世界有数の銀を産み、その富がバロックや新古典の教会と邸宅を谷に建てた。氾濫を鎮めるために掘られた川筋の跡は、のちに車の通う地下道へと姿を変えている。

色彩と地下の迷宮
多くの植民都市が碁盤の目を敷いたのに対し、この街は谷の起伏に従って路地を折り曲げた。狭い石畳は階段になり、行き止まりになり、家々は隣と肩を寄せて色を塗り分ける。整然とは無縁の秩序が、ここでは景観になっている。
地下では、かつての坑道と川跡をつないだトンネルが車を吸い込み、地上の路地から喧噪を引き取る。恋人たちが窓越しに口づけたという口づけの小径の言い伝えや、秋に街を満たす音楽祭も、この入り組んだ地形があってこそ根づいた。

坂の上と路地の底
路地に踏み込むと、頭上に洗濯物と鉢植えが揺れ、壁の橙や青が近く迫る。坂を上るごとに視界がひらけ、足を止めれば谷の対岸まで家並みの色が段々に連なって見える。学生の街でもあり、石段のあちこちに話し声と楽器の音がこぼれている。
夕刻、丘の上の展望台へ上ると、灯りはじめた無数の窓が谷の底までびっしりと瞬く。日中の彩度は薄れ、街全体が暖色の光の粒へと変わっていく。夜が深まるにつれ、路地からは弦の音や笑い声がのぼり、色彩の街はそのまま音の街になる。
日本からの行き方
日本からは、成田とメキシコシティを結ぶ直行便のほか、米国主要都市での乗り継ぎ便が使える。乗り継ぎを含め、片道はおおむね一日がかりの旅路になる。メキシコシティからは国内線でバヒオ国際空港へおよそ1時間、空港から市街までは車で40分ほど。
メキシコシティからは長距離バスでも結ばれ、高原の幹線を4〜5時間ほど走る。街は標高が高く、朝晩は年間を通して冷え込む。6月から9月の雨季は午後に驟雨が多いため、屋外の街歩きは午前に寄せておくと動きやすい。
健康と安全
街は谷の斜面に築かれ、石畳の坂と階段状の路地が続く。移動の多くは徒歩で、上り下りと不揃いな段差が一日を通して重なる。歩きなれた靴を選び、こまめに休みを入れておきたい。総合病院は市内にあり、急な体調不良にも市街で対応できる。
